諸々,徒然… その二  素晴らしき文字の饗宴(壱)
 
るーみっく原作にはキャラ自体の魅力や設定の面白さもさることながら,まんがメディアならではの味わいがあります。
そのひとつに,文字や言葉によって醸し出される雰囲気といったものが挙げられると思います。
今回は,そのことについて駄論を繰り広げてみましょう。

まずは,「擬音」について。

擬音で,そのキャラが誰か分かると言うことがあります。アニメ,まんがの典型例で言えば,手塚先生(と断る必要もないですが)のアトムの歩行音。しかし,アトムが典型例なんて,年齢層がバレそう…(大汗)。

実際には音がしない紙上のメディアであるまんがにおいて,あたかもそこに聞こえているように「音を見せている」のが擬音。ガバッとかドーンとか描かれた,あれですな。これ,何気なく見てると場面状況のための説明的な装飾のように感じてしまいます。が,トンでもないですよね。描き方によって,「そのコマの空気」まで変えてしまう,非常に重要な役割を果たしている名脇役。まんがを描かれたことのある方は,「何を今さら…」と思われているでしょうけれど。

一般論はこの程度で止めておいて,るーみっく原作の擬音について…。

アトムの歩行音に劣らない,るーみっくの擬音と言えば,ラムの飛行音がありますね,「ピュルルル〜」って感じで。でも,何と,原作には描かれていないんですよね,これが。
とは言え,それは問題ではありません。そんなことは気にならない,原作ならではの擬音の乱舞があるのです。

真っ先に気づくことは,高橋先生のひらがなとカタカナの使い分けが絶妙ということです。
例として,犬夜叉原作・猿神のエピソードを挙げてみましょう。この時は,普段と比べて軽妙なコミカルさが目立つ展開になっていますが,その背景のひとつに,ひらがなの擬音が多いことがあります。子猿精霊たちの妖術によって手から離れなくなった大岩を犬夜叉が引きずる時の「ず〜こ,ず〜こ」や,犬夜叉が子猿たちを順に殴った時の「がんげんごん」漬け物石にされていた御神体から猿神さまが現れた時の「でろーん」。村の畑を根刮ぎ掘り返そうとした犬夜叉,かごめの『おすわり』で「ずーん」!いやはや,ひらがな擬音のオンパレード状態です。他のエピソード,対決して技が応酬されるような息詰まるシーンを見比べてください。そちらは,必ずカタカナの擬音が爆裂しているはずです。

ひらがなが視覚的に持つ「丸み・柔らかさ」によって,おかしさや温かみが盛り上がります。カタカナは,その「鋭さ」によって緊迫感を強調しています。同じ読みの音でも,かな書きとカナ書きとでは,その響き具合やその場の空気感(緊張感)が全然違ってきます。
このあたりは,プロ中のプロである高橋先生なら,あえて意識しなくても駆使できる基本中の基本テクニックでしょうね。

擬音に関して,もう一つ感じることが,印象深いユニークな響きがあるということ。
踏んづけられた時の「ぶぎゅる」は,その代表格ですね。唐突に現れた錯乱坊にたまげてぶっ飛んでしまう時の「ちゅどーん」,飛びかかりながら抱きつく時の「がばちょ」(「がばっ」ではなく。恐らく,「ひょっこりひょうたん島」のドン・ガバチョから取ったんでしょう)なども頭に残って消えません。
先の,ひらがなで表されているということもありますが,音の並び自体が非常に愉快です。
思わず口に出してしまいたくなります。いや,実際に何度も口に出して言ってしまったことが…。

え?あなたも,そうなんですか?よかった!私だけの「病気」じゃなかったんだ…(^^;)

 

≪ もどる