諸々,徒然… その三 素晴らしき文字の饗宴(弐) 
 
前回は,るーみっく原作における文字や言葉の持つ魅力のうち,「擬音」について記しました。
今回は,「セリフ」について,また独り善がりな論述をしてみようと思います。

といっても,「心に残る,あのセリフ」という類ではありません。
その手のものは,折を見ていずれかの機会に改めてということにして,ここで取り上げたいのは,言い回しや使われている言葉自体の面白さのことです。
 

言い回し(口調とも表せます)。これの明確な強調や使い分けによって,それぞれのキャラをより個性的に引き立てる工夫がされている点が,るーみっくに見られる大きな特徴です。これは,原作のみならず,アニメにおいても表現可能なものですが,ここで外すことはできないと思います。

犬夜叉(乱馬にも共通します)の「けっ!」や「なんでぃ!」に代表される,ちょっと拗ねたような口調。昔なら,こういう言い方をするだけで,不良少年というレッテルがはられたものです(^_^;)。が,強がる少年の内面というものは,得てして傷付きやすくデリケート(笑)!二人の性格に,よく出てるでしょ?

犬夜叉の仲間には,「言い回しによるキャラ立て」がよく見て取れます。かごめは現代の女の子の言葉遣いなのは当然ですが,対して珊瑚は,「〜だろ?」や「〜しておやりよ」のような「姐さん言葉」によって,強さとともに内面の優しさを滲ませています。弥勒は,慇懃な普段の言葉遣いと本音が出た時の乱暴な言い回しの対比が,彼の「光と影」を表す記号のひとつになっています。七宝の場合,小さくてもキツネ妖怪です。元来,稲荷さまという神の使いであったわけですから,「高貴さや誇り」につながるものを感じさせなければなりません。それは「〜じゃ」という言葉に凝縮されてますね。老人言葉ではなく,京都の公家言葉から来ているはずです。

この「方言」というか,「用いる地域や人々がある程度限定されている」言葉。それをキャラの役割や性格によって使い分ける手法を実に巧みに用いているのが,うる星ですね。

あたるやメガネは,現代の東京の人間なのに,なぜか「何でじゃい?」などと語尾に方言入ってます。これにより,標準語の面堂とはポジションが対局にあることが際立ってきます。
その面堂に至っては,あたるのせいで壊れちゃうと,「そこへなおれーっ!」と武家言葉。これで,やはり「普通じゃない」やつという印象が強まります。
「壊れる」といえばランちゃんの十八番ですが,彼女の場合,怒ると関西弁になりますね。彼女は鬼族ではありませんが,鬼星に住んでます。ラムの両親,テン母子,そしてランの母親に至るまで,鬼星の住人には関西弁を使わせています。ただ一人,ラムを除いて。(ちなみに,鬼族の男やラン母娘が使っているのは大阪弁(浪速言葉か河内言葉かは判別不能)ですが,ラムのかーちゃんやテンの母親など鬼族の女性の口調は,「あきまへん」「そんなこと,おへん」などの言葉やイントネーションから考えて京都近辺のもの(近江言葉?)で,大阪のそれとは異なっているように思います。方言のこと,よくは知らないんですけれど…。)

さて,真打ちはラム。あの,「…ちゃ」ですよね!純血の鬼族でありながら,彼女の口調だけは関西弁じゃありません。標準語を常用する人はおろか「関西語圏」の人にとっても馴染みのない,しかし,一度耳にすると実に印象に残る訛りです。
一説では,ラムだけがあの喋り方になったのは,母親が宇宙通販で買った地球語翻訳機を,少し誤って操作したため(おいおい!)と言われていますが…。閑話休題。
この訛りの元は,高橋先生の出身地である新潟説を最右翼として諸説入り乱れています。が,いずれにしても,標準語とも関西弁とも異なる言葉による語り方がラムの魅力の一つであり,それまでにはなかったヒロイン像を作り上げる大きな役割を果たしていることには,異論を挟む人はないでしょう。
 

セリフに関する2つめの注目点ですが,壱の巻「擬音」の中でも取り上げた「形から受ける印象」とも繋がるものです

セリフの中には,音声として耳から入るだけでは,十二分にその面白みが伝わらず,活字として目から入り頭の中で言語として響いた時,初めて味わい深くなるものがあります。「活字効果」といえるでしょう。ただ,読み手は,言葉が持つ意味もつかむことを要求されます。擬音の時と比べ,「描き手にも読み手にも高度な手法(^^;)」と言えるでしょう。るーみっくには,これが擬音に負けない印象深さで使われています。

分かりやすい例が,うる星「すだま亭」の話。これだけで笑い出したあなたは,国語4以上間違いなしでしょう!あたるたち一行,この老朽化した宿に到着して開口一番,「古色蒼然」(しのぶ),「旧態依然」(面堂),とどめにラムが「崩壊寸前」!四字熟語のテストじゃないんだから…(笑)本来,古臭さのスゴさを表した前の二語と壊れかけてるということは無関係なんですが,3つを一コマの中に描き込むことで,互いが補完・協調し合って,もう,おかしいこと×2!アニメの場合,順に言葉を言わなければ聞き取れませんし,全て聞き終えてから前の言葉を反芻しないと,面白くなくなってしまいます。まんがならではの表現方法と言えるでしょう。

それにしても,しっかり韻を踏んでるあたり,ラムちゃんの言語能力,あなどれません(^o^)。
 

普通,セリフは吹き出しをつけて,言っている人物の側に配置します。これが,ネームと言われているものですよね,確か?しかし,ネームのような吹き出しがついていないもの(ボソボソ,ガヤガヤのつぶやきや,「外野」での会話)も見逃せません

例としては,クラマ姫が面堂と契ろうと校庭に組み立てたカプセル,それを見た男子生徒たちが,「あの中で,やるんだそーだ」とすぐ傍で話し合っている(妄想が突っ走っとる ^^;)ものや,ラムとデート中のあたるが,これまたデート中のコースケと偶然出会った時の会話「顔のマズさじゃキミには及ばんよ」「いやいや,キミこそ顔の造作自体が…」などなど。

これらは,読み飛ばしたところで,本編の流れをつかむことを阻害しません。でも,目に留めてみると,何とも言えないおかしさがこみ上げて来るんですよね〜。しかし,アニメでこの効果が出せるかどうか?「メインのセリフ」と「小さなつぶやき」を同じ時系列の上に乗せ,互いを引き立てることは,まず不可能でしょう。
 
 

るーみっくの文字と言葉が醸し出す魅力を語るには,まだまだ結構字数を要します(-_-;)。 
まだ,今回のうちに書き切れなかったことと「擬態語」を,次回に記します。
 

 

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