諸々,徒然… その四 素晴らしき文字の饗宴(参)
どーも,ズルズルと長引いてますが,るーみっく原作・文字や言葉の持つ魅力について,まだ書き切れていないものをまとめて,最後にしたいと思います。
今回の内容が,ある意味一番るーみっくらしいと私自身は感じているのですが。
一つは擬音やセリフとも異なる「背景などに描き込まれた言葉」のこと。
これは,比較的初期の頃の特徴で,犬夜叉ではとんとお目にかかれなくなり,淋しくなりました。もっとも,作品の性格上,なかなか使えない技法だとは思います。
何のことかとお思いでしょう。
あれですよ,あれ。身を隠すために使った立て看板に『冷凍マンモス入荷』とか,街角の背景,薬局の店先に『滋養強壮にヘモグロビン』なんていう描きこみ!本編の展開には無関係の「遊び」なんだけど,これが嬉しいんですよね(^o^)
そうそう,単行本うる星「平安編」の中で,茶店の腰掛けに「かへてらす」とあったのに,去年になって初めて気付きました。なんと,20年間見逃していたとは!
この「遊び」,気にしなくてもいいんだけれど,目につくと腹を抱える上に,つい突っ込み入れたくなります。「ヘモグロビンなんて,赤血球の成分じゃないの!抽出して精製したのかっ?」なんてね(大笑)
高橋先生も「ヘモグロビン」はお気に入りだったのか,うる星・サクラとツバメのデートで出たこのネタ,めぞんで朱美さんが「五代君への差し入れ」と響子さんに渡したドリンクの箱にありました。
はばかりながら,私も拙作中に使わせていただきました(^^;)。
音がしているわけではないが,その場面の様子や人物の態度を表す言葉が,擬態語ですね。無音状態の「しーん」など,文章の場合は,ごく当たり前の表現技法です。が,るーみっくの擬態語に関しては,「遊びとしての描き込み」以上に目を見張るものがあります。
擬音語に代えてわざわざ擬態語を用いたものがあります。あたるに取り憑いた病魔が,サクラのお払いであたるから離された後,2年4組の男子生徒たちによってボコボコにされるコマに,「なぐるけるのぼうこう」!
もう,言葉通りで説明が要りませんね(>_<)だけど,「ドカドカ」や「ばきっ」なんて一般的な殴ったり蹴ったりの擬音より,断然面白いんですね,これが。あ,実際に,生身の人を集団暴行するなんてことは,断固反対ですよ!
顔に文字を描きこむという手法も,擬態語の一種でしょう。妹,了子がトンちゃんと駆け落ちすると思いこんだ面堂。「この責任は,きさまの命であがなってもらおうか〜」刀を抜きながら,トンちゃんに迫るその顔には,血走った目やつり上がった眉,食いしばった口元…ではなく,「すっかり本気」の文字が!顔つきの代わりに文字とは,何という思い切った省略,いや発想の逆転!
乱馬が,幼い時に自分がでたらめに調合した右京の秘伝ソース付きお好み焼きを食べた時,その顔に出た「へのへのもへじ」も,目からウロコが落ちるものがありましたね。びしっと音立てて飛び散るし,その直後,自分の手で拾って,ぺたぺたと顔に貼り付けてるし…(絶倒)誰もが描けるへのへのもへじ顔を用いて,苦しみで崩れきった表情を想像させる(それも,あくまでコミカルに)なんて,思いつけるものじゃありません!
るーみっく的と言える擬態語の使い方の中でも,一番るーみっく的と言えるのが,「絵との重複」による軽妙なテンポの創造ではないでしょうか。
ほら,うる星でよく目にしたでしょ?「さりげなく」や「きっぱり」「あっさり」の文字。別段,これらの言葉がなくても,絵からその様子が伝わるところを,敢えて描き込んでいる場面。これによって,読み手は,まるで自分がそのコマに入り込んでいるように思います。人物同士がやりとりしている,その場の「リズムや空気」が生き生きと流れてくるように感じるわけですね。
はぁ〜,3回連続!こんなに長文になるとは思わなかった(T_T)。
こんな駄論におつき合いくださった方,本当にありがとうございました。あなたは,心の広ーい菩薩さまのようなお方です<(_
_)>。
なお,今回のテーマでは,まんがの中に描く(えがく)という意味合いで,「文字や言葉を描く(かく)」という表現を使いました。あしからず…。
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